仮面ライダーができるまで
東映ヒーロー35年の歴史で、初公開(!)かもしれないトピックです。
2005年2月、頭部原型チェック
マスク形状を完成させていく作業です。写真は、原型師の小松さん@レインボー造型企画。
眼の大きさ・複眼の構造・クラッシャーの角度等々が、ミリ単位で検証されていきます。
それにしても、なぜいきなりマフラー?!
「眼とマフラーを大事にしたい!」
という長石監督の意向は、最初から明確でした。
マフラーだけでも、風になびく・アクションの邪魔にならない・もったりしない・色あい・長さ・形・素材感・透明度……等々、検証ポイントは山のようにあります。そこで、早期からマフラーの素材選びをスタートしたのでした。
3月上旬、フィッティング
何度も何度も、数え切れないくらい何度もやった作業の、これは3回目くらいでしょうか。
ようやく《スーツ》らしき形になり、1号役・前田浩さんと2号役・マーク武蔵さんが着始めたとたん、「カッコいい!」と思わず声を上げる武部プロデューサー。
「マスクがなくても、もうこれだけで!」
東映の長い禁忌を破るきっかけとなった一声。(*1)
革製に見えますが、実際にはビニールに近い素材です。
ナイトシーンが多いので、ハイライトをはっきりさせること。肉眼で見る本革のカッコよさを映像で再現すること。マスクやコンバーターラング(胸パーツ)、ベルトといった固いパーツとなじませること。……数々の条件から、本革よりもテカリの強い素材を探しています。
それを「カッコいい皺が寄り、カッコ悪い皺が寄らない」ように縫製するために、縫製部隊は血のにじむような努力をはじめます。
3月下旬、カメラテスト
ライダースーツがほぼ完成に近づき、カメラテストが行なわれました。
現場にライダーが登場すれば「
おお!」。モニターを見ては「
おお!」。
いちいち歓声を上げて大盛り上がりのスタッフ。
このとき、誰からともなく言い出された言葉───「
無駄に血が騒ぐ」。
「俺たちは『仮面ライダー』をやるんだ! どうしてこうまで、無駄に血が騒ぐんだ!」
「あの」仮面ライダーだったものが、「この」仮面ライダーになった瞬間でした。
そんな騒ぎをよそに、真剣な表情を崩さないのは、田中一成カメラマン以下撮影部。
「1号の青・2号の緑」を、最も渋く・カッコよく、フィルムに定着させる設定を探り出すのが彼らのミッション。田中カメラマンがOKを出すまで、カメラテストは3回に及びました。
造型についても、まだまだ試行錯誤がつづきます。
たとえば、マフラーひとつにも駄目出しが。「縫い目が気になる」と、監督の鶴の一声───縁がほつれないようにステッチ仕上げしていたのがNGと。
最終的には、シーンごとに違うマフラーを用意することに!
4月上旬、俳優用スーツフィッティング
縫製法はおおむね完成しているので、最初からかなりバッチリ決まります
(写真は2回目あたり)。
それでも、さらにやり直すこと3・4回。襟にせよ肩にせよ、調整ポイントはいくらでもあり……。
本郷猛役・黄川田さんのフィッティングに立ち会ったスタッフからは、「そんなバカな!」と一斉に声が。
バイブルとして、みんな原作コミックを持ち歩いていた時期。
「マンガみたいな理想的な体型なんかねーよ! と思ってたのに、ホントにいるなんて……!」
横山アクション監督の指導による、俳優さんのアクション練習もスタート。
キャストもスタッフも、緻密かつ無駄に血を騒がせながら、怒濤のようにクランクインに向かっていくのでした。
*1)
スーツアクターがマスクを脱いだ姿や、制作途中ををお見せ「しない」のは、東映が守りつづける永遠のタブー。
「夢を壊すから」というのがその理由です。
(もちろん、スーツアクターさんのお顔が夢を壊すわけもありません。スーツアクターさんは、ふしぎなほど男前&美女ぞろいなのです)
まず、変身前の俳優さんと別の顔がそこにあるショックが大きいこと。知識として知ってるのと、実際に目にするのとは大違いです。
そしてもう1つ、マスクを脱いだ姿がいまいちサマにならないこと。これは当たり前。だってヒーロースーツは、マスクと一体となって初めて1つの《キャラクター》として完成するようにデザインされているのですから。
ところが、原作コミックにも頻出するとおり、仮面ライダーはもともと、マスクを脱いでもカッコいいデザイン。
そうした、本来の仮面ライダーの魅力を最大限に出していくのが本作のテーマですし、《仮面をかぶる》ことにこだわる以上、《脱ぐ》ことにもこだわります。
本作に限り、東映の鉄則をあえて破ることをご了承ください。